ボルネオ生まれで現在はクアラルンプールを拠点に活動するアーティスト／デザイナー、アイウェイ・フー。フィンランド・アールト大学でファッション・衣料デザインの修士号（2013年）を取得し、シンガポールでアパレルデザイン＆マーチャンダイジング、南洋美術学院で美術を学ぶなど、多分野を横断した背景を持つ。視覚芸術、写真、映像、パフォーマンス、音楽、文書、テキスタイル、茶道、食まで、幅広い表現を実験的に探求している。

JNTO「Japan Art Travel」アンバサダー候補（2019年）、Unknown Asia審査員賞（2016年）、武井正和賞（2019年）、ピエール・カルダン・デザインコンペ最優秀賞（2004年）など受賞歴も多い。
主な近年の展覧会には、個展「Forever Gone But Always Exists」（2024年）、クアラルンプール日本財団「Kaleidoscope Japan」（2022年）、The Godownでの「Still Life」（2022年）や「Open Books Project」（2021年）などがある。

Concept

私の作品はドローイングで、画材は紙にグラファイト（鉛筆）です。 このドローイングでは、木製のボールが鏡の前に立っています。しかし、鏡はボールの姿をそのまま映さず、代わりに洋ナシを映し出します。ボールと洋ナシは、ともに果てしない空に包まれています。

この静かな「裏切り」は、反射と類似性という確実性を揺るがします。かつては反復の器であった鏡が、ある形が別の形へと姿を変える「変容の場」となります。ボールはもはや自らのイメージに縛られることなく、異なる可能性に向かって開かれています。

ここでいう裏切りとは、喪失ではなく再生です。それは期待の穏やかな亀裂であり、驚き、美、そして自由を生み出します。この断絶の中で、モノとイメージ、現実と想像は、革新と伝統が一杯の杯（さかずき）の中で共に存在するように、共存しているのです。